農業マフィアのつぶやき / 新規就農のすすめ

農業・農村・農家のこと、ときどきロボット。 就農のはてな

営農計画の作成にかかる売上について

営農計画を立てる前の準備や立て始める時の思考の進め方を見ていきたいと思います。

 

品目の選定、農地の面積や就農状況のイメージができてきたところで、売上の作成に取り掛かっていきたいと思います。

 

まずはおさらいから

 

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おさらい②

 

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前回の記事で売り先や売り方を中心に、異なる販売方法での営業利益率の比較をしてきましたが、今回は営農計画上の売上にかかる部分の確認になりますので、販売方法は鑑みずに数字を見ていきます。

 

参考に前回の記事

 

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**

 

今回もざっくりと検証をしてみます。

 

//営農計画の売上

 

//キャベツ

 

まずは選定を行った品目と品種を並べます。

今回は品種は記載なし。

 

続いて、栽培面積(a)、10a当たり収量(kg)、販売量(kg)、単価(kg/円)、売上高(円)を計算します。

 

その他は適宜、営業(本業)以外の収入などの枠を考えておきます。

 

 例)キャベツ   1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
栽培面積(a)   10 20 30 50 100
10a当たり収量(㎏)   3,800 3,800 4,000 4,000 4,200
販売量(㎏)   3,800 7,600 12,000 20,000 42,000
単価(㎏/円)   60 60 70 80 80
売上高(円)   228,000 456,000 840,000 1,600,000 3,360,000
作業受託収入          
その他収入(助成金など)          
228,000 456,000  840,000 1,600,000 3,360,000

 

//ポイント

年度ごとの農地の確保予定や計画を考える。

 

10a当たりの植栽本数(栽培数量)、秀品率や収穫量を考える。

 

相場なのか自身で販売するのかどのように流通をさせるかを加味した単価を考える。

 

**

 

新規就農時の生産も販売も難しい時期は、マニュアルに沿った生産計画や市場などの販基本となる販売経路を活用することが必要となりますが、課題は単価を高くすることが容易ではない点です。

 

旬の時期の相場は安く、全国の産地の出荷量も多いため、高単価で売ることは期待できません。

 

加えて販売経験、販売実績、生産実績や地域や取引関係先との信頼関係などが不足しているため、継続的に中~高単価で安定して販売することは障壁が多いでしょう。

 

一年一年、単価や10a当たり収量を上げて、少しずつ積み上げていきましょう。

 

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新規就農時の売り先と売り方を検証してみる

就農前に考えることの重要な売り先と売り方を見ていきたいと思います。

生産計画に係る作付けや栽培の段取りはもちろん必要ですが、計画の前に売り先や売り方を想定しておくことも大切です。

 

まずは作付けの計画についておさらい

 

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野菜の流通は市場を通すことが一般的ですが、近年では直売所やネットショップなど、売り先や売り方が多岐に渡るようになってきました。

 

産地や品目を調べる際のポイントとして、地域の農協や市場をチェックすることの大切さは以前の記事でも書きましたが、今回は個人販売について考えてみたいと思います。

 

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**

 

//ざっくりと検証

 

①市場出荷と個人宅配の違いとはなにかを洗い出す

 

②販売先による手間とコストの違いを、共通経費を固定し比較検証してみる

 

参考)

タマネギ

 

青果市場

宅配個人

収量/kg

 

4000

4000

単価//kg

 

80

200

売上高

 

320000

800000

栽培原価

 

120000

120000

売上総利益

 

200000

680000

 

梱包資材費

 

50000

 

運送費

10000

10000

 

受発注コスト

3000

30000

 

機械設備費/7年償却

 

100000

その他経費

 

13000

190000

 

収穫

40000

40000

 

乾燥・選果・梱包

 

200000

 

出荷

10000

50000

 

債券回収

5000

50000

人件費

 

55000

340000

営業利益

 

132000

150000

 

③単価、売上高や売上総利益(粗利)ではなく営業利益に注目する。

 

⇒単価、売上高   : 個人流通/市場 2.5倍

売上総利益(粗利): 個人流通/市場 3.4倍

⇒営業利益     : 個人流通/市場 1.1倍

 

④販売量を増加させるなど、どの程度拡大可能かを調べる

 

⑤リスクや問題点を想定し追加コストと対策を考えておく

 

//新規参入時のポイント

 

新規就農時の売り先の理想は70%〜90%は市場流通(市場農協加工業者卸売含)を利用する方がリスクが少ないと判断している。

 

相場変動はあるが、手間や品質などを考えると、就農初期は勉強も含めて市場流通を利用して生産技術も高めていくべきでしょう。

 

経験を積んだのちに、自身の生産や農業に対するポリシーと合う取引先を見つけ、持続可能な農業を目指した関係先の開拓に努め拡大をすすめていくことをオススメします。

 

個人での流通は商流と物流の両面の確保も必要なため、無理をしない販売方法を構築していきましょう。

 

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営農計画の作成に向けた作付の計画について

就農したい地域や生産したい農産物のイメージがついてくるとまずは一つの品目に絞って作付計画を立ててみることをオススメします。

 

 

まずは株で収穫するキャベツやブロッコリーなどのわかりやすい野菜から見ていきます。

 

仮にキャベツを選んだ場合は、就農や生産をする地域の気候や気象条件を確認します。

 

冷涼地

中間地

暖地

 

播種から収穫や片付けまでの作業の状況をイメージしながら品種の選定と作付スケジュールを比較していきます。

 

//例

品目:キャベツ

品種:彩音

特徴:耐病性・耐寒性・在圃性にすぐれる、濃緑の寒玉中晩生種

栽培:栽植株数は、畝幅130cm、株間30cmの2条植えで、10a当たり5,200株を標準とする

 

作業スケジュール案:

播種7/25〜8/5

本田準備(耕耘施肥土壌改良…)7/25〜8/10

育苗7/25〜9/5

定植8/25〜9/5

管理8/25〜12/25

収穫出荷11/25〜12/25

撤去12/25

その他

 

**

 

エクセルなどでタイムスケジュールを組んで、播種7/25から撤去12/25までの日次の作業内容と各作業に係る時間を計っていきます。

 

前回の記事で書いたナンバリングやラベリングを、作型でもおこないます。

 

 

//参考

キャベツ①<彩音①<冬年内①<7/25播種

キャベツ①<彩音①<冬年内②<7/28播種

キャベツ①<彩音①<冬年内③<8/1播種

キャベツ①<彩音②<冬年明け①<8/15播種

 

品目、品種、作型大や作型小などでカテゴライズして、10a(1反)当たりの作業ごとの日次タイムスケジュールを計り、マスタデータを作成しておく。

 

マスタデータの組合せにより計画の立て方に幅が広がり、日次の作業のイメージや、栽培計画を基にした、販売計画の立案や販売営業につながります。

 

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圃場、場所や作業のナンバリング・ラベリングについて

新規就農の準備を進めるために農業法人での就業や農家での研修を勧めてきましたが、実際に働きながら作業をする上で大切なことを見ていきたいと思います。

 

 

地域や作物のイメージがついてくることで、学びたい品目や目指す農家像が決まってくると、まずは体験などから始めて現場で働いてみることで、実際の自分の体験が数値としてみえてきます。

 

今回は圃場や設備のナンバリングについて意識を向けてみたいと思います。

 

//圃場をナンバリングする

 

〇〇農会<地権者A<圃場①

〇〇農会<地権者B<圃場①

〇〇農会<地権者B<圃場②

〇〇農会<地権者C<圃場①

 

地権者ごとや水利組合ごと、広域の場合は集落農会ごとに設定をする。

 

//ハウスをナンバリングする

 

ハウス①

ハウス②

ハウス③

 

ハウスA

ハウスB

ハウスC

 

ハウスは①から進めるかAから進めるかどちらかで設定をおこなう。

 

//圃場内の畝をナンバリングする

 

ハウス①<畝A

ハウス①<畝B

ハウス①<畝C

ハウス②<畝A

地権者A<圃場①<畝A

 

圃場ごとやハウスごとに作付の計画を立てて、畝ごとに作業を日次で集計していきます。

 

//例

日次集計

作業名:収穫

品目:リーフレタス

内容:ハウス①の畝Cから何kg収穫

補足:選別梱包時の廃棄率10%、収穫出荷率90%

時間帯:何時から何時まで

時間:何時間、何分

天気:温度、湿度、雨晴れ

 

農業系のアプリやエクセルデータなどを活用して場所ごと作業ごと人ごとの日次集計を取ることで、作物や人の動きや流れを捉えることにつながります。

 

まずはメモ帳などで数字を残しながら、使いやすく振り返りやすいエクセルデータの作成を進めていきましょう。

 

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新規就農計画の立案~作業時間を表とグラフにする~

国や各種の媒体が出している情報を調べていくことで、少しずつ農業のイメージがついてきたかと思います。

 

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産地、地域や作物を調べてながらどちらか一方が決まっていくと、更に深堀りした情報の収集につながっていくことでしょう。

 

品目や地域の栽培方法や、生産地の状況を現場をまわり、農作業の体験をこなしていくことで、自分なりの時間限界や自分値が見えてきたら、並行して計画の作成に取り掛かることも、改めて自分と向き合うよい時間となると思います。

 

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**

 

新規就農計画の作成に向けての大切なポイントとして、まずは作業時間の月次の内訳をみていきます。

 

次の画像は複数の品目を組み合わせて作業時間を割り出した表です。

 

//おさらい

作業内容の抽出

耕耘・施肥・播種・育苗・定植・防除・管理・収穫・選果・出荷・片付け・撤去・etc

 

それでは作業の内訳例を見ながら具体的な作業イメージをふくらませていきましょう。

 

//参考

作業労務内訳 表 例)

 

                       

(h)

労務内訳

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

耕運

2

34

0

0

60

18

23

12

16

0

0

6

育苗

10

12

0

0

36

98

42

0

0

0

0

0

定植

0

24

0

0

0

120

85

92

92

0

0

0

肥料散布

0

14

2

2

20

47

32

14

5

0

0

4

農薬散布

0

14

14

6

24

49

39

23

8

8

8

8

中耕

8

0

0

0

0

6

15

6

0

0

0

8

除草

40

44

4

0

0

60

95

31

1

0

0

0

収穫

0

0

220

120

120

132

120

150

90

145

145

100

出荷

0

0

80

80

80

88

80

70

30

48

48

33

撤去

5

0

20

0

0

12

0

0

40

0

0

15

 

**

 

次いでグラフ形式にしたものを見てみるとより一層イメージがみえてきます。

 

//参考

作業労務内訳 グラフ 例)

 

f:id:agrimafia:20190824231343p:plain


このグラフを見ると、9月の作業時間が月600時間となり、一人では対応できないことがわかります。

6月や8月はなんとか一人でこなせる作業時間ですが、10月や11月も9月と同様に人手が不足することがわかってきます。

 

品目ごとに播種や収穫などの作業時間を把握していくことで、品目、作型や面積の組み合わせによる、就農計画の具体的な作成につながるでしょう。

 

//ポイント

①品目の選定

②作型の検討

③品目作型ごとの面積

①②③を組み合わせた計画

 

Excelなどで数字を確認して、作業のイメージや数字に裏付けされたデータを作成しましょう。

 

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自分値をもとにした時間限界と計画

前回のポイント

 

作業スピードは個々人により異なるため、平均値や参考値ではなく、大切なのは自分値を捉えること

 

 

計画準備の前段階で必要な作業の洗い出しは慣れてきたと思います。

 

**

 

//おさらい

//作業

耕耘・播種・育苗・定植・施肥・防除・管理・収穫・選果・出荷・片付け・撤去etc

 

地域や主な品目が決まってくると、品目ごとの面積や生産販売方法のイメージも見えてきます。

 

品目ごとの作業の時間数をカウントして計算をすることで少しずつ数字の把握ができてくるでしょう。

 

収穫や定植など時期が重なる作業については、品種や作型の選定に加えて、作業の組合せやタイミングにも注意が必要です。

 

生産マニュアルやガイドラインを調べてみたり、実際に農家や農業法人で作業体験や研修を受けていく際には、一つ一つの作業の、始まりから終わりまでの時間を計測するなど、日次、週次や月次でどのように推移していくのかを計ってみるとよいでしょう。

 

実際の数字による推移を見ていくことで、今後の伸び率の予測や、作業ごとの成長率の動きがわかり、どのタイミングでどの作業を覚えることに集中すべきかなど、発見につながると思います。

 

//ポイント

カウントと時間限界

 

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新規就農に向けた計画準備の中の作業時間の重要性について

新規就農に向けて調べていく中で、国や自治体の各種制度や公庫が出している制度資金などの基本的な情報の掴み方はわかってきたと思います。

 

 

また土地や品目の選び方や、土地またら主となる品目のどちらかが決まったあとの、情報の集め方や考え方も見えてきたことでしょう。

 

 

これらの準備を進める中で何度も記事中で言及してきた、自分なりの作業時間の把握について掘り下げて考えてみたいと思います。

 

**

 

「自分なりの作業時間の把握」

 

まずは選んだ主な品目の作業内容の抽出から進めます。

 

//生産作物

メインとなる品目

サブ品目s

(メインの品目が決まり、作業内容や作業時間が見えてくると、サブの品目も限定されてきます)

 

//作業内容

耕耘・肥料散布・防除・播種・育苗・定植・管理・潅水・収穫・選果・出荷・片付け

 

耕耘だけをとってみても、田畑の周囲の農道の状況や、機械倉庫や機械洗浄場所からの距離などにより、作業時間が細かく変動していくため、圃場や機械を動かす具体的なイメージを持つことが必要です。

 

また播種にかかる時間や定植の速度なども、個々人のレベルや性質により作業時間が異なり、また田畑の状況によっても、軽トラックの進入路や軽トラックの停車位置などにより作業性が変わるため、自身と周囲の環境についても意識しなければなりません。

 

作業者によっては、収穫は得意で早いが定植が苦手な場合や、反対に定植は得意で早いが収穫が苦手な場合もあり、個々人の特性や能力によっても様々ですので、自分のキャラクターを見極めて、計画を立てていくことをオススメします。

 

人の多寡や個人の能力に左右される手作業ではなく、機械ですればいいと思うかもしれませんが、例えば定植機の導入には、キャベツやブロッコリーで1ha(10aの10倍)の規模を超えるなど、数10aなどの小さな規模では、最初から投資をすることが難しい場合もあります。

 

投資の観点から見ても初動の手作業は必要ですし、経験や技術の習得の側から鑑みても、全ての作業を手作業でやってみることは、大切なことだと思います。

 

例として出してみたキャベツの播種の作業イメージの捉え方についてはこちら

 

新規就農の流れと方法論②「品目の深掘り⑶」 - 農業マフィアのつぶやき / 新規就農のすすめ

 

//ポイント

作業スピードは個々により異なる。

平均値ではなく自分値を!

 

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